※この記事は筆者の個人的な見解・記録です。投資アドバイスではありません。特定の投資行動を推奨するものではありません。
今日、キオクシア(285A)がまた大きく揺れた。6月22日の高値から見るとすでに25%下落。Xを見ていたら「追証で悲鳴」という声をいくつも見かけた。
市場でも「追い証回避の売り圧力」が下げを助長している、と報じられている。含み損を抱えた信用取引の投資家が、追証を避けるために売る。それがさらに株価を押し下げる。この連鎖が今まさに起きているらしい。
自分は$DRAMを現物で保有していて、レバレッジはかけていない。でも今回の騒動を見て、「そもそも追証ってどういう仕組みで、どれくらいの下落で来るのか」を自分でもちゃんと理解できていないことに気づいた。今日はそれを調べて整理した記録を残しておきたい。
① そもそも「フルレバ」とは何か
自己資金(証拠金)に対して、その何倍もの金額の取引ができる仕組みのこと。日本株の信用取引では委託保証金率が最低30%と定められていて、これは自己資金の約3.3倍までポジションを持てるという意味になる。
例えば自己資金100万円なら、最大約330万円分の株式を保有できる。これを目一杯使い切った状態を「フルレバ」と呼ぶ。
② 追証はどういう仕組みで発生するのか
ポジションが値下がりして含み損が拡大すると、証券会社が定める「最低限必要な担保の水準(委託保証金維持率、目安20%前後)」を下回る。この時、「担保が足りないので追加で入金してください」と要求されるのが追証だ。期限内に入金できないと、証券会社が強制的にポジションを決済(強制ロスカット)する。
③ 数字で計算してみる——どれくらいの下落で追証が来るのか
自己資金100万円、3.3倍のフルレバで330万円分のポジションを持ったケースで考えてみる。
これがなぜ怖いか。キオクシアは直近16営業日のうち10%超の値動きが6回も起きている。この銘柄でフルレバをかけていたら、わずか数日から2週間程度で追証ラインに到達しうるということだ。実際、6月下旬の高値からの下落率はすでに25%に達している。
④ 追証は口座全体の評価損益の合計で判断される
信用取引の証拠金維持率は、銘柄ごとではなく口座全体の評価損益の合計で計算される。複数銘柄を保有していれば、下がっている銘柄と上がっている銘柄の評価損益が相殺され合って維持率が保たれる、という仕組みだ。
A株だけ下落した場合
A株:100万→50万(−50万) / B株・C株:変動なし
口座資産 = 100万 − 50万 = 50万
総評価額 = 50万+100万+100万 = 250万
維持率 = 50万 ÷ 250万 = 20%(追証ライン)
A株下落・B株C株が上昇した場合
A株:100万→50万(−50万) / B株:100万→120万(+20万) / C株:100万→110万(+10万)
口座資産 = 100万 −50万+20万+10万 = 80万
総評価額 = 50万+120万+110万 = 280万
維持率 = 80万 ÷ 280万 ≈ 29%(まだ余裕あり)
同じ「A株が50%下落」でも、他の保有銘柄が上昇していれば維持率に余裕が生まれる。追証は銘柄単体ではなく、口座全体のネットの損益で判定される、ということだ。
⑤ 証券会社にとってのメリットは何か
証券会社の収益源は主に信用金利(貸出金に対する年2〜3%程度の金利)と売買手数料。追証の仕組みそのものは、値下がり時に貸したお金を確実に回収するための担保積み増しであって、証券会社にとっては「貸し倒れを防ぐための保険」に近い。
ここから言えるのは、ポジションを長く持つほど、予期できない下落リスクを長く背負い続け、その間ずっと証券会社に金利と手数料を払い続けることになる、ということだ。レバレッジをかけて長期保有するのは、リスクと支払うコストが両方積み上がっていくだけで、あまり合理的ではないと思う。フルレバをやるなら、短期間で決着をつける前提でやるべきだ。
⑥ フルレバの最悪のケース
調べていて、一番怖いと思った落とし穴がここだった。レバレッジの最悪のケースは「証拠金が0円になって終わり」だと思っていたけど、実際は違う。強制決済してもなお借入金を返しきれず、追加の借金が発生する可能性があるのだ。
そしてもっと怖いのは、この最悪のケースが決して起こらないレアケースではなく、いつ起きてもおかしくないということ。まるで地震だ。いつ、どの規模で来るかは誰にも予期できない。にもかかわらず、これほどのリスクを張ってフルレバをしている人が多いことに、率直に驚いた。
前提として、暴落は企業の実力とは無関係に起きることがある。キオクシアがまさにその実例だ。
「ファンダメンタルズが良いから大丈夫」は、短期的な株価には通用しない。
そしてこの予期できない急落が起きた時、フルレバだと以下のようなパターンが重なって、借金にまで発展することがある。
売り注文が殺到すると株価がストップ安に張り付き、売りたくても売れない状態になる。この間も含み損は拡大し続ける。
パターンB:時間外に悪材料が出て、翌朝「窓を開けて」急落する
夜間に悪いニュースが出ても、多くのネット証券では信用取引のポジションはPTS(私設取引システム)で決済できず、現物株限定。結局、翌朝の東証の寄り付きを待つしかない。しかも寄り付いた時にはすでに株価は前日終値から大きく離れた安値になっている。
パターンC:流動性が低く、大量の売り注文をこなせない
買い手が少ない銘柄だと、売ろうとするだけで自分の注文が株価を押し下げてしまい、想定した価格で売り切れない。
いずれのパターンも、証券会社が決済しようとした時にはすでに株価が急落した後で、想定よりはるかに安い価格でしか売れない、という結果になる。売却代金が借入金に満たなければ、その差額(不足金)は投資家が背負う現金の借金になる。返済できなければ督促や法的な回収手続きに進む可能性もある。
キオクシアのファンダメンタルズやモメンタムは正直申し分なかった。不祥事が起きそうな気配もなかった。短期で儲けたい人が飛びつきたくなる気持ちは分かる。それでも、これだけの下落が発生し追証が発生しているのを見ると、フルレバという手法はハイリスクと言わざるを得ないと思う。
⑦ 結論——どんな時ならレバレッジを使っていいのか
ここまで調べてきて、フルレバレッジの本質的な怖さは自分の証拠金がすごい速さで0円になることではなく、最悪莫大な借金を背負うリスクが、自分のコントロール外で常にあり続けることにあると感じた。戦争、金利動向、インフレ、どこかの国の不祥事、コロナウイルス、リーマンショック。銘柄自体の実力とは関係なく、予期せぬ暴落の引き金になり得るものは世の中にいくらでもある。つまりその予期せぬ暴落が起きた時、自分の意思とは関係なく、想定外の価格で強制決済され、高額の借金を背負ってしまう可能性が常にあるということだ。
以上の点から、基本的には使わない方がいいと思う。それでも使いたいなら、業績が良くても理由なく暴落することがある以上、ポートフォリオのごく一部、なくなっても生活や他の資産計画に影響が出ない金額の範囲に限定してするべきだと思った。
・追証は担保(証拠金維持率)が一定水準を下回った時に発生。目安はポジションの20〜25%下落
・キオクシアのようなボラティリティの高い銘柄だと、数日〜2週間で到達しうる水準
・追証の判定は口座全体の評価損益の合計で行われる
・証券会社の収益源は信用金利と手数料。長期保有するほどリスクと支払うコストが両方積み上がる
・ストップ安や窓開け急落が重なると、強制決済してもなお借入金を返せず、不足金という現金の借金が残ることがある
・信用取引のポジションは多くの場合PTSでは動かせず、時間外の急落から逃げる手段は実質ない
・業績が絶好調でも、センチメント要因だけで株価が理由なく25%下落することがある(キオクシアが好例)
・全財産を1つのポジションに投入するのはレバレッジの有無に関わらず避けるべき
・基本的には使わない方がいい。使うならポートフォリオのごく一部、なくなっても困らない金額の範囲に限定する
Stay the Course. 👊
※本記事は筆者の個人的な見解です。投資は自己責任でお願いします。特定の投資行動を推奨するものではありません。


コメント