自分の投資基準は、ずっとファンダメンタルズを中心に据えてきた。
業績が伸びていれば、いずれ株価はついてくる。シンプルにそう考えていた。
でも最近のマイクロンとサムスンの決算を見て、その前提が少し揺らいだ。
マイクロンは売上高・利益率・EPSの三冠で過去最高。サムスンも営業利益が前年比19倍で過去最高。それなのに、どちらも発表後に株価は大きく崩れた。
ファンダメンタルズが最高でも株価が下がるなら、自分はこれから何を基準に投資すればいいのか。ファンダメンタルズ以外に、何を注意して見ておくべきなのか。
その答えを、自分なりに探してみた。
- ①「良い決算なのに株価が下がる」のはなぜか
- ②メモリ高騰が生んだ副作用
- ③これは例外か、繰り返されるパターンか
- ④今後の投資基準に組み込む、たった一つの軸
調べてみると、これは自分だけが感じている疑問ではなく、ファイナンスの世界では昔からある程度整理されている現象らしい。
株価は「今の業績」ではなく「将来の業績への期待」を織り込んで動く、という考え方。どんなに決算の絶対値が良くても、市場がすでに織り込んでいた期待値を上回れなければ株価は反応しない。むしろ下がることもある。
決算が「予想通り良い」場合、それはもう株価に織り込まれている。本当のサプライズは「予想を超えて良い」か「予想より悪い」かの差分だけ。良い決算=株価が上がる、という単純な因果関係は理論的にも成り立たない。
相場格言として古くからある。期待で買われて、確定情報(決算)が出た瞬間に「材料出尽くし」で利益確定売りが出る現象。
マイクロンもサムスンも、決算前にすでに大きく買われていた。マイクロンは決算前2週間で40%超、年初来では260%超の上昇。サムスンも年初来で195%の上昇。
つまり、決算が出る前からかなりの期待値が積み上がっていたことになる。良い数字が出ても、それを超えるサプライズでなければ、素直には評価されない状況だったわけだ。
ここからは、今回のメモリ市場で具体的に何が起きていたのかを見ていく。
自分がずっと引っかかっているのは、「メモリ価格が高騰しすぎたこと」自体が、いくつかの悪い方向への波及を生んでいたという点。
Appleは「チップフレーション」を理由に、Mac・iPad・Vision Proなどを最大20%値上げした。DRAM契約価格自体、2026年初頭だけで推定55〜60%急騰している。メーカー側は一時的に高値で売れても、その裏で最終需要そのものを縮小させるリスクを抱えている。
Appleが中国のCXMT・YMTCとの調達交渉に動いたのも、根本には「既存サプライヤーの価格が高すぎる」という事情がある。価格が上がりすぎたこと自体が、寡占構造を崩しにいく圧力を自ら生んでしまっている。
2026年6月25日、従来型DRAMの間接購入者がサムスン・SKハイニックス・マイクロンを相手取り、米カリフォルニア北部地区連邦地裁に集団訴訟を提起した。協調減産やHBMへの能力シフトを通じた供給制限・価格つり上げの共謀を主張する内容。価格が上がりすぎたこと自体が、「意図的な価格操作」を疑われる材料になってしまった。
値上げが値上げを呼び込み、その副作用が巡り巡って自分たちの首を絞めにいく。今回の一連の株価下落の背景には、こうした構図があるように見える。
ここが一番知りたかった部分。今回のメモリの件は特殊な出来事なのか、それとも今後も繰り返し起こりうるパターンなのか。
色々考えてみたけど、結局これは一つの問いに集約できると思う。
これが「実行しない(=顧客は離れない)」と言い切れる企業ほど、価格支配力が安全に保たれる。NVIDIAのCUDAエコシステムがまさにこれで、乗り換えに膨大な開発コストがかかるため、多少値上げしても顧客は実際には動けない。
逆に「実行してしまう(=顧客は離れる)」リスクがある企業は危うい。今回のメモリがまさにこれで、DRAM・NANDは基本的に規格品(コモディティ)なので、Appleほどの巨大バイヤーであれば、価格に怒って中国メーカーとの交渉に動く、という行動を実際に取れてしまう。
つまりこれは「メモリだけの例外」ではなく、「規格品を、顧客が乗り換えを実行できる状況で売っている企業」全般に当てはまる構造的なリスクだと考えている。今後どんな銘柄を見るときも、この一点をまず確認したい。
最後に、この学びを今後どう使うか。細かいチェック項目を並べるより、シンプルに一つの軸だけ持っておきたい。
新しい顧客・新しい用途によって数量そのものが伸びているのか、それとも既存の顧客に同じ製品をより高く売っているだけなのか。後者の比率が高いほど、今回のメモリのように危うい構造だと考えて注意する。
決算資料や決算説明会では、「Volume」と「Price/ASP(平均販売価格)」を分けて開示している企業も多い。今回のマイクロンの決算にも「DRAM単価は前期比6割増、NAND単価は8割超の値上がり」という記載があった。これはまさに「単価頼み」のシグナルが強く出ていた例だったと、振り返って思う。
ファンダメンタルズが良いことと、株価が上がることは、必ずしもイコールではない。
今回の学びは、これまでの自分の投資基準を否定するものじゃなくて、「ファンダメンタルズ=業績の絶対値」ではなく「ファンダメンタルズ=期待値との相対関係」として捉え直すための補強材料だと思ってる。
この視点は、次にどんな銘柄を見るときにも使えるはず。
Stay the Course.👊


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