7月に入ってから、$DRAMを中心とした半導体セクターのボラティリティが激しい。
7/1はSOXが−6.27%、$DRAMも−10.82%と急落。翌7/2はSOXがさらに−5.44%、$DRAMも−7.94%と続落した。SNSでは阿鼻叫喚という状況で、「損切りした」という声をたくさん見かけた。
ところが7/3、日系半導体は寄り付きこそ大きく売られたが、そこから切り返して日経半導体指数は+4.33%で終えた。韓国市場も同様に反発した。7/3は米国市場が祝日で休場だったためわからないが、この流れが続いていれば大きくプラスになっていた可能性が高い。
損切りした人が間違っていたとは思わない。自分の保有理由が崩れたと判断して売ったなら、それは正しい行動だ。ただ、なんとなく上がっているから買い、なんとなくやばそうだから売るというやり方は、長期的に見て非常に失敗しやすいと思っている。
だからこそ今日は、自分が$DRAMを保有している理由と、手放す条件を改めて整理したい。
→ SOX−5.44%の相場全体の動きと、その日の気持ちはこちらに記録しています。
- $DRAMとは何か
- 保有理由——なぜ握り続けるのか
- 売りシグナルの定義——手放す条件
- 今週のニュースを売りシグナルでフィルターにかける
- 米国規制——メリットとデメリットの両面
- この下落から学んだこと
$DRAMはRoundhillが運用するメモリ特化ETFだ。Samsung、SK Hynix、Micronの3社でおよそ4分の3を占める、極めてHBM色の濃い構成になっている。
単なる「半導体ETF」ではない。AIインフラを動かすメモリという、非常に絞り込まれたテーマへの投資だ。だからこそボラティリティは非常に激しい。だからこそ、なぜ持つのかという保有理由と、いつ手放すかという売りシグナルを事前に明確にしておくことが重要だ。
6/28の記事でも書いたが、自分の保有理由は変わっていない。
・第一波(データセンター向けHBM)の需要はまだ続いている
・第二波(エッジAI・フィジカルAI・エージェントAI)は市場がまだ正確にイメージできていない
・その全てにメモリが必要で、作れるのは世界で3社だけ
・ハイパースケーラーの巨額投資がその確信を裏付けている
HBM(High Bandwidth Memory)はAIサーバーの中でNVIDIAのGPUと組み合わせて使われる超高性能メモリだ。これを量産できるのはSK Hynix、Micron、Samsungの3社だけで、NVIDIAのGPUはSK HynixのHBMと組み合わせて設計されているため、他のメモリに差し替えることができない。
第二波については、エッジAI・フィジカルAI(工場・ロボット・自動車)はもちろん、エージェントAI——自律的に判断・行動するAIシステム——の普及も加わる。これらは全てメモリを消費する。そしてデータセンターだけでなく、各国が国策レベルでAIインフラを整備しようとしている。どの国がAIデータセンターを作ろうとしても、NVIDIAのGPUを使う限りHBM3社から買うしかない構造だ。
さらに7/2、CNBCのトランプ独占インタビューでこんな発言があった。
「AI産業には今保有している2倍の電力が必要だ。古いグリッドでは足りない」
「退任までにチップ製造の40〜60%を米国内に戻す。アリゾナに工場を作る。雇用も生まれる」
ゴールドマンサックスの試算ではAI Capexは2026年に7,650億ドル、2031年には1.6兆ドルに拡大する見込みと報じられた。AIはもはや国家戦略レベルの話になっている。
保有理由の裏返しとして、手放す条件もあらかじめ決めている。
① ハイパースケーラーのCapex(設備投資)が下方修正される
② NVIDIAのGPU出荷計画が大幅に削減される
③ メモリ3社同時に在庫過剰のサインが出る
このどれか一つが該当したら手放しを検討する。
「連日大きく下がっているから」という不安で手放すのと、「売りシグナルが出た」という根拠で手放すのは、まったく別の話だ。
今週は複数のネガティブなニュースが重なり、半導体株が大きく売られた。それぞれを売りシグナルのフィルターにかけてみる。
ただしこれは「AIエージェントの開発が遅れている」という話であって、インフラ投資を減らすという話ではない。AIエージェントはそもそも現段階ではまだ構想・実験段階のものが多く、実用化の目処も不透明だ。既存システムへの統合コストやセキュリティ・信頼性といった障壁も高く、業界全体が「どうすれば実用になるか」を模索している状況だ。開発が遅れているからこそ、モデルをさらに強化するためのインフラ投資が続くという方向性にもなり得る。実際メタは直近のCapexガイダンスでインフラ投資を増やす方向を示していた。
そもそもHBMを大量に買っているのはMicrosoft・Google・AWSが中心で、メタはその中でも比較的小さなプレーヤーだ。「メタが弱い=HBM需要が減る」は論理が飛躍しすぎている。
ただし現時点では訴訟はあくまで「提訴」であって立証されていない。過去の同種訴訟(2018年)は却下されている。仮に認定されても対象は汎用DRAM(DDR3/DDR4)であってHBMではないため、HBMの需要と価格には直接影響しない。将来的に政府介入が本格化するようであれば注視が必要なリスクだが、今すぐ保有理由を揺るがすものではない。
Appleが中国2社(CXMT・YMTC)からメモリ調達を交渉中との報道が、Bloomberg・FTにより確認された。ただし対象は中国国内で販売される端末専用で、グローバル向けiPhone/Macへの採用ではない。CXMT(DRAM)はDDR5・LPDDRといった汎用メモリではすでに実用レベルにあり、技術力そのものより「政治的にどこまで許容されるか」が焦点になっている。実際Tim Cook自らが米財務長官に、CXMTを将来の禁輸リスト(Entity List)に加えないよう働きかけている段階だ。
グローバルなHBM需要という自分の保有理由には影響しない話だが、この「禁輸リスト」の仕組み自体、調べてみると自分も最初かなり混乱した。また新たな情報が出てきたので、詳しくはXで投稿しているのでそちらをご覧いただきたい。
「中国企業のメモリって結局買えるんだっけ?」ってなったので自分用に整理してみました👇
— AI勇者の1000時間チャレンジ (@AI_yusha1000) July 5, 2026
違っていたらすいません🙇♂️
■ まず「リスト」は2種類ある
・Entity List(商務省): YMTCが載ってる。米国発の技術・設計情報をその企業に渡すのにライセンス(許可)が必要になる。
・1260Hリスト(国防総省): CXMTとYMTC両方が載ってる。法的拘束力はほぼなく、「中国軍と関係あり」というレッテルによる風評リスクが中心。
米国の対中規制がHBM3社への追い風になっているという話をよく書くが、正直なところ両面がある。
・製造装置の輸出規制:最先端の露光装置(ASML等)が中国に渡らないようにしている
・エンティティリスト:中国のメモリメーカーは米国企業との取引が制限されている
・1261リスト:国防総省が188社を追加。制裁の網が広がり続けている
中国のCXMT等はHBM1相当すら安定量産できておらず、SK HynixはすでにHBM3Eを量産している。世代で3〜4世代遅れた状態だ。
・トランプ政権の規制は「取引的」に運用されており、一貫性が読みにくい
・米国政府が国内メモリ供給への介入を強めれば、価格や生産計画に制約が生じる可能性がある
・中国市場への販売制限は3社にとって機会損失でもある
総合的に見ると、今のところ「技術的に追いつかれにくい構造になっている」という状態だと思っている。製造装置の規制が続く限り、中国勢が脅威になるのは数年先の話だ。ただし規制の方向性は常に注視が必要だ。
売りシグナルが出ていない下落で売ることは、ルールを自分で破ることだ。感情で動いた売りは、後で必ず後悔する。
② どんなに魅力的に見えても資産は集中しすぎず分散した方がパニックになりにくい
$DRAMをポートフォリオの10%以下に抑えていたから、冷静でいられた。半導体が崩れた日にゴールドが動いたことも、分散の効果だった。
③ レバレッジは握力を弱める
韓国のレバレッジETFが引き起こしたサーキットブレーカーの連鎖を見ていた。レバレッジをかけると、下落局面で「耐える」という選択肢が失われる。
自分が心から信じて選んだなら、間違いでも仕方ない。だからこそ、どんなに魅力的に見えても分散させる。それが今回の一番の学びだった。
・売りシグナル3つのどれも今週は確認されていない
・メタ発言・カルテル提訴・Apple調達観測——いずれも売りシグナルには該当しない
・米国規制はメリット・デメリット両面あるが、今のところ追いつかれにくい構造が続いている
・連日大きく下がっているからという理由で売るのと、売りシグナルが出たから売るのはまったく別の話だ
Stay the Course. 👊


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